総合型選抜を知る

<目次>

総合型選抜とは?

総合型選抜入試は、以前は「AO入試」と呼ばれていました。

大学側が設定しているアドミッションポリシー(大学が求める人物像)と合致する学生を探すために、多面的な人物評価を実施し、入学者を選抜します。

出願は9月頃から開始となる大学が多いです。

評価方法は、書類、面接、プレゼン、小論文、高校での評定、共通テストの成績などの様々な要素を組み合わせ、一人ひとりを丁寧に評価していきます。

総合型選抜(AO入試)が増えてるって本当?

年々増加傾向にあります。

一般入試ではない方式(=総合型+学校推薦)の割合は下図の通りです。

2022年度入試のデータで、国立大では17.9%、私立大では58.9%が、一般入試ではない年内入試で学生を選抜しています。

志願者数も増加傾向にあり、私立大学の総合型選抜志願者は2020年度の14万人から2022年度の18万人へ、2年で4万人も増加しています。

総合型選抜(AO入試)に向いている人はどんな人?

①大学で学びたいことが明確な人

総合型選抜においては、受験する大学学部で自分が具体的にどのようなことを学びたいのかをしっかりとアピールしなければ合格することはできません。

つまり、自分のやりたいこと、学びたいこと、実現したいことが明確になっている人物でなければいけません。

さらに言えば、そういった自分の自己実現のために、高校時代にはどのような活動をしていたのかという点も大事なポイントになります。

例えば「どうしても環境問題について深く学びたい」という人が、高校時代に環境問題について調べたり、活動をしたり、全くしていなかったら「本当にこの子は環境問題を学ぶ意思があるのか?」と大学の教授は疑問を持つでしょう。

自分のこれまでの活動と、大学で学びたいこと、さらには社会に提供していきたいことが一貫していなければ、大学の教授を説得することはできません。

その意味では、自分のやりたいことだけでなく、大学のアドミッションポリシーを正しく深く理解していることも合格の必須条件となります。

②論理的思考力と表現力がある人

上記のような一貫性をアピールするにあたっては、論理的な思考ができ、それを分かりやすく相手に伝える力が必要となります。

小論文が多くの大学の総合型選抜で課されますが、小論文は、まさに論理的思考力と表現力を測る試験と言えます。

どれだけ学びたい気持ちや具体的な学習プランがあっても、それが試験官に伝わらなければ合格をさせてはもらえません。

自分が学びたいことを上手く伝えられるようなトレーニングは、話すこと、書くことの両面で必須となるでしょう。

③基礎学力の向上を怠らない人

学校推薦型ほどではありませんが、総合型選抜でも評定平均値が条件になっている大学学部が多く存在します。つまり、高校での日々の勉強をしっかりとこなし、定期試験等で結果を出す基礎学力が合格の条件になっているのです。

また近年では、共通テストを課すケースが、特に国公立大学で増加傾向にあります。2018年度は107校が共通テスト(当時センター試験)を課し、2022年度は149校が課しています。5年で約1.5倍です。私立大で学力試験を課すケースは少ないものの、今後国公立と同様の動きがあるかもしれません。

総合型選抜(AO入試)は合格しやすい?

みなさんの中には「総合型選抜入試は合格しやすいから挑戦したほうがいい」と言われたことがある人がいるかもしれません。

高校の教員や塾講師のなかにも、そのようなアドバイスをしてくる人がいますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

この記事では総合型選抜入試の受かりやすさについて考えてみましょう。

①倍率が低いから受かりやすい

最も頻繁に聞くことがあるアドバイスがこちらです。一般入試と比較して倍率が低いので、総合型選抜入試は合格しやすいというものです。

事実、一般的なデータを比較すると、倍率は総合型選抜入試のほうが低いです。一般入試だと5倍以上の倍率の大学学部が、総合型選抜入試だと2倍程度であることなどもよくあります。

しかし、だからといって受かりやすいとは限りません。

なぜならば総合型選抜入試のほうが出願条件が厳しい場合があるからです。

例えば「評定平均値が4.0以上」などという出願条件が課せられていることが総合型選抜入試ではよくあります。しかし一般入試にはこのような条件はありません。

つまり、総合型選抜入試においては、そもそも出願する段階で、ライバルがある程度絞られており、もっと言えば厳しい条件をクリアしたライバルが受験をしにやってくるわけです。

よって、倍率の数値が小さいとはいえ、それがイコール合格しやすいというのは分析力が足りない発想です。

ただ、しっかりとリサーチをすると、出願条件が全然厳しくないのに倍率が低いという大学学部の総合型選抜入試も実は多く存在します。そういったところを見つけることができれば、確かに一般入試よりも合格しやすい環境での勝負ができるでしょう。

また、2024年現在で言えば、総合型選抜入試についてそもそも受験を検討すらしていない受験生も多く存在します。一般入試は受験するのが当たり前だとみんなが考えているのに、総合型選抜入試は特別な人だけが受験するものだと思い込んでいる人は、まだ国内にたくさんいるのです。

徐々に総合型選抜入試の認知度と受験者数は拡大しているので、今後はライバルも集まりやすくなると予想しますが、現状では一般入試よりも低い倍率は、合格しやすさに繋がっていると考えてもよいかもしれません。

②活動実績がある人は受かりやすい

総合型選抜入試は、基本的には自分が大学入学後に探究したいテーマや、そこに繋がる現在の自分の活動をアピールする入試と言えます。

そこで言われるのが「せっかく実績があるんだから総合型選抜入試に挑戦したほうがいい」とか「特に活動実績がないのであれば総合型選抜入試はやめておいたほうがいい」というような言葉です。果たしてこれは事実なのでしょうか?

総合型選抜入試の中でもアスリート方式のように、明確に「全国大会出場で出願OK」とか「全国〇位以上で加点」などという基準が明記されている入試は別として、「〇〇コンクール優勝」「〇〇に1年留学」「ボランティアを1年経験」のような実績があれば総合型選抜入試が必ず有利に進められるかと言えば、それは嘘です。

その活動実績が、大学で学びたいこととしっかりリンクしていればアピール材料になりますが、そうでなければ大学教授たちも「なんでこの活動が、うちの大学への入学動機になるんだ?」と疑問に感じてしまいます。

最も大切なことは、華美な実績があるかどうかではなく、大学での学びを見据えて、高校時代からそこに繋がる活動を着々と実施できているかどうかです。

そのような一貫性がしっかりとあり、その実績が素晴らしいものであれば、それは総合型選抜入試において大きな武器になるでしょう。

一般入試で受験に挑戦するのももちろん良いですが、その前に、総合型選抜入試に1度挑戦してみる価値は大いにあると思います。つまり合格しやすいと言っても過言ではないでしょう。

③受験科目が小論文や面接だから受かりやすい

総合型選抜入試では一般入試のような学科の試験を求められるケースは少なく、大抵が書類や面接での審査になります。

複数教科の勉強をする必要はなく、受験する総合型選抜入試の試験内容に合わせた対策だけを集中的に行えばいいので、合格しやすいと考えている人もいるようです。

確かに準備時間を比較すれば、一般入試ほど長期間の勉強は不要です。

ただし、非常に大雑把にはなってしまいますが「国語力」「論理的思考力」が弱いという自覚があるタイプの人は、総合型選抜入試が合格しやすいということには決してならないと感じます。

出願時に提出する志望理由書や事前論文課題、試験当日の小論文や面接など、総合型選抜入試では主に「書く」「話す」が必須になります。

自分の考えが相手に伝わるように、論理的な文章を書き、論理的に言葉にして話さなければなりません。

これらが得意な人にとって、総合型選抜入試は確かに一般入試よりも少ない準備で合格が目指せる合格しやすい入試だと考えることもできるでしょう。

しかし逆に苦手な人にとって、総合型選抜入試はむしろ合格しづらい試験とも言えます。一般入試では地道に用語を覚えるなどの努力が点数に繋がる部分も大きく存在しますが、総合型選抜入試ではそういった努力でどうにかならない部分も多分に評価要素に含まれてしまっているからです。

結論、総合型選抜入試(AO入試)も一般入試も、大学受験においては戦略が重要です。

戦略とは、自分の得意不得意を見極め、その自分にマッチした受験方式を選択していくことです。

出願条件、倍率、試験内容、自身の特性を十分にリサーチして、自分が勝てる見込みの高い受験をすれば、きっと合格に近づくことができます。

ただ、まだ知られていないという意味では、総合型選抜入試には多くの可能性が残されており、合格しやすいと言える側面もあります。

是非、専門塾の先生などに相談し、自分の受験戦略を突き詰めて考えてみてください。受験は情報戦の側面がどうしてもあります。専門塾や塾講師、教員に頼り、自分にとって適切なアドバイスをもらうことはとても重要です。

総合型選抜と公募制推薦の違い

学校推薦型は、総合型選抜と違って、在籍高校の学校長の推薦が必要になります。

さらに「公募制」と「指定校制」の2つに方式がありますが、国立大は公募制のみ、私立大は2つの方式を併用しています。

出願は11月からとなりますが、指定校推薦でどの大学に応募できるかは9月頃には高校から発表されるのが一般的です。

出願条件には「評定平均値」が定められていることが一般的です。学校推薦型選抜では、高校での学習や課外活動など、日常的な部分を評価する方式と言えます。

逆に総合型選抜では評定平均値が選抜要件に入っていないことも多く、アドミッションポリシーと合致しているかどうかをより強く見ていることが分かります。

総合型選抜(AO入試)は併願できないの?

大学受験には「併願可」と「専願」の2つの方式があります。

「専願」:合格した場合、その大学に入学することが前提となる

「併願可」:他の大学に合格した場合、そちらへの入学を選ぶことが許されている

  

入試要項の文章をよく読んでみたときに、

「専願」や「入学を確約できる者」という記載があれば、それは「専願」を指します。

「併願可」や「当校を第一志望とする者」などの記載であれば「併願可」を意味します。

 

総合型選抜は基本的には「専願」の入試方式です。

その大学のアドミッションポリシーに自分が合致することをアピールする試験方式ですので、当然と言えば当然です。

ただし、明確な記載や定めがなければ、併願をするのが普通です。

滑り止めの受験ができないような受験戦略は誰もとりたくないですよね。

よって、現実的には「強く志望する大学や専願表記のある大学を第一志望とし、併願が認められている学校を第2志望以下に据えて受験をする」というパターンになることが多いでしょう。

 

また、自分が所属する高校が「調査書」を発行してくれるかどうかも確認が必要です。

「専願の入試に出願するなら調査書は1枚しか発行しないよ」という高校もあれば、無制限に発行してくれる高校もあります。

「専願」であっても、調査書などの入手が可能であれば複数校出願して受験することができてしまうというのが実情です。

また、総合型選抜と一般入試方式を併願することは可能です。総合型選抜で専願の学校に合格したら入学することが基本となりますが、そうでなければ一般入試にチャレンジすることはもちろん認められています。

総合型選抜(AO入試)に内申点や評定は必要?

総合型選抜入試(AO入試)には高い評定平均(=内申点)が必要だと思っている人がいるようですが、必ずしも必要ということではありません。

この記事では総合型選抜入試における評定平均の重要性について記載します。

評定平均とは、高校入学後、高校3年生の1学期(2期制なら前期)までの成績を平均した数値を指します。基本的には全ての科目・教科において1〜5の数値で表され、その平均値は、小数点第2位で四捨五入するのが決まりです。

総合型選抜入試においては、出願条件にこの評定平均値が用いられることがあります。

例えば

・全体平均4.0以上

・全体平均3.5以上かつ英語の評定4.0以上

など、基準の設け方も様々です。

一般的に、ハイレベルと言われる大学では、ハイレベルな評定平均の基準が求められがちです。

また、評定平均値を出願条件に課す方式と課さない方式が両方用意されている大学学部などもありますが、その場合、評定平均が必要となる方式のほうが倍率が低くなる傾向などがあります。

また、評定平均を一切問わない総合型選抜入試も存在します。

評定ではなく、英検などの資格を重要視するような形式もあります。

もちろん、高い評定を獲得しておけば、総合型選抜入試における出願の選択肢は広がりますので、高ければ高いほどいいわけですが、評定が低いからと言って総合型選抜での受験を諦めることはありません。

総合型選抜入試(AO入試)の受験を考えている人は、評定を高める努力はしつつも、自分が持てる材料で受験できる大学学部や入試方式をきちんとリサーチする力も必要です。