総合型選抜は合格しやすい?

みなさんの中には「総合型選抜入試は合格しやすいから挑戦したほうがいい」と言われたことがある人がいるかもしれません。

高校の教員や塾講師のなかにも、そのようなアドバイスをしてくる人がいますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

この記事では総合型選抜入試の受かりやすさについて考えてみましょう。

 

①倍率が低いから受かりやすい

最も頻繁に聞くことがあるアドバイスがこちらです。一般入試と比較して倍率が低いので、総合型選抜入試は合格しやすいというものです。

事実、一般的なデータを比較すると、倍率は総合型選抜入試のほうが低いです。一般入試だと5倍以上の倍率の大学学部が、総合型選抜入試だと2倍程度であることなどもよくあります。

 

しかし、だからといって受かりやすいとは限りません。

なぜならば総合型選抜入試のほうが出願条件が厳しい場合があるからです。

例えば「評定平均値が4.0以上」などという出願条件が課せられていることが総合型選抜入試ではよくあります。しかし一般入試にはこのような条件はありません。

つまり、総合型選抜入試においては、そもそも出願する段階で、ライバルがある程度絞られており、もっと言えば厳しい条件をクリアしたライバルが受験をしにやってくるわけです。

よって、倍率の数値が小さいとはいえ、それがイコール合格しやすいというのは分析力が足りない発想です。

 

ただ、しっかりとリサーチをすると、出願条件が全然厳しくないのに倍率が低いという大学学部の総合型選抜入試も実は多く存在します。そういったところを見つけることができれば、確かに一般入試よりも合格しやすい環境での勝負ができるでしょう。

 

また、2024年現在で言えば、総合型選抜入試についてそもそも受験を検討すらしていない受験生も多く存在します。一般入試は受験するのが当たり前だとみんなが考えているのに、総合型選抜入試は特別な人だけが受験するものだと思い込んでいる人は、まだ国内にたくさんいるのです。

徐々に総合型選抜入試の認知度と受験者数は拡大しているので、今後はライバルも集まりやすくなると予想しますが、現状では一般入試よりも低い倍率は、合格しやすさに繋がっていると考えてもよいかもしれません。

 

②活動実績がある人は受かりやすい

総合型選抜入試は、基本的には自分が大学入学後に探究したいテーマや、そこに繋がる現在の自分の活動をアピールする入試と言えます。

そこで言われるのが「せっかく実績があるんだから総合型選抜入試に挑戦したほうがいい」とか「特に活動実績がないのであれば総合型選抜入試はやめておいたほうがいい」というような言葉です。果たしてこれは事実なのでしょうか?

 

総合型選抜入試の中でもアスリート方式のように、明確に「全国大会出場で出願OK」とか「全国〇位以上で加点」などという基準が明記されている入試は別として、「〇〇コンクール優勝」「〇〇に1年留学」「ボランティアを1年経験」のような実績があれば総合型選抜入試が必ず有利に進められるかと言えば、それは嘘です。

その活動実績が、大学で学びたいこととしっかりリンクしていればアピール材料になりますが、そうでなければ大学教授たちも「なんでこの活動が、うちの大学への入学動機になるんだ?」と疑問に感じてしまいます。

最も大切なことは、華美な実績があるかどうかではなく、大学での学びを見据えて、高校時代からそこに繋がる活動を着々と実施できているかどうかです。

そのような一貫性がしっかりとあり、その実績が素晴らしいものであれば、それは総合型選抜入試において大きな武器になるでしょう。

一般入試で受験に挑戦するのももちろん良いですが、その前に、総合型選抜入試に1度挑戦してみる価値は大いにあると思います。つまり合格しやすいと言っても過言ではないでしょう。

 

③受験科目が小論文や面接だから受かりやすい

総合型選抜入試では一般入試のような学科の試験を求められるケースは少なく、大抵が書類や面接での審査になります。

複数教科の勉強をする必要はなく、受験する総合型選抜入試の試験内容に合わせた対策だけを集中的に行えばいいので、合格しやすいと考えている人もいるようです。

 

確かに準備時間を比較すれば、一般入試ほど長期間の勉強は不要です。

ただし、非常に大雑把にはなってしまいますが「国語力」「論理的思考力」が弱いという自覚があるタイプの人は、総合型選抜入試が合格しやすいということには決してならないと感じます。

 

出願時に提出する志望理由書や事前論文課題、試験当日の小論文や面接など、総合型選抜入試では主に「書く」「話す」が必須になります。

自分の考えが相手に伝わるように、論理的な文章を書き、論理的に言葉にして話さなければなりません。

これらが得意な人にとって、総合型選抜入試は確かに一般入試よりも少ない準備で合格が目指せる合格しやすい入試だと考えることもできるでしょう。

しかし逆に苦手な人にとって、総合型選抜入試はむしろ合格しづらい試験とも言えます。一般入試では地道に用語を覚えるなどの努力が点数に繋がる部分も大きく存在しますが、総合型選抜入試ではそういった努力でどうにかならない部分も多分に評価要素に含まれてしまっているからです。

 

結論、総合型選抜入試も一般入試も、大学受験においては戦略が重要です。

戦略とは、自分の得意不得意を見極め、その自分にマッチした受験方式を選択していくことです。

出願条件、倍率、試験内容、自身の特性を十分にリサーチして、自分が勝てる見込みの高い受験をすれば、きっと合格に近づくことができます。

 

ただ、まだ知られていないという意味では、総合型選抜入試には多くの可能性が残されており、合格しやすいと言える側面もあります。

是非、専門塾の先生などに相談し、自分の受験戦略を突き詰めて考えてみてください。受験は情報戦の側面がどうしてもあります。専門塾や塾講師、教員に頼り、自分にとって適切なアドバイスをもらうことはとても重要です。